2013年6月28日金曜日

秀丸マクロ:最後に編集した位置へコピーするマクロ

今回紹介するSimplyTerms(ST)同梱マクロは、置換した語句などを簡単にコピー&ペーストする「Copy_LST」です。

訳文を入力するときに、一括置換した用語を見ながらキーボードから入力し直すと、入力のための手間暇もかかるし、入力ミスや誤変換をする可能性もあります。このマクロを使えば、一括置換した用語や「AddTerm」マクロで置換した用語を簡単に訳文に貼り込むことができるので、手間暇は減り、入力ミスや誤変換も減らすことができます。

マクロの動作

  • 単語(またはフレーズ)を選択している場合
選択した範囲を、最後に編集した位置に貼り込みます。(toやandなどのいくつかの前置詞や接続詞、句読点を選択範囲した場合は、「から」「と」などと変換されて入力されます。詳細は後述)
  • 範囲選択していない場合
カーソル位置が最終編集位置とは異なる場合は、そのカーソル前後のスペースやテン、カンマ、改行、@などで挟まれた部分を、最後に編集した位置に貼り込みます。
カーソル位置が最終編集位置のママの場合は、現在編集中のテキストファイルのサブ拡張子が「_eng」の場合、「, 」(カンマ+半角スペース)を挿入し、それ以外のファイルの場合は、「の」を挿入します。

※秀丸で「最後に編集した位置」を一目見てわかるようにするには、メニューの[その他]→[ファイルタイプ別の設定]→[デザイン]→[表示]で「最後に編集したところを表示」にチェックを入れます。「Copy_LST」マクロを使う前に設定を確認してください。



では、このマクロを下の文章の英日翻訳で試しに使ってみましょう。Wikipediaの「Cresol」のページの一部です(http://en.wikipedia.org/wiki/Cresol)。

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In its chemical structure, a molecule of cresol has a methyl group substituted onto the ring of phenol. There are three forms (isomers) of cresol: ortho-cresol (o-cresol), meta-cresol (m-cresol), and para-cresol (p-cresol). These forms occur separately or as a mixture.
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テクニカルタームを一括置換したものが、下の文章です。

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In its chemical structure, a molecule of クレゾール has a メチル基 substituted onto the ring of フェノール. There are three forms (異性体) of クレゾール: ortho-クレゾール (o-クレゾール), meta-クレゾール (m-クレゾール), and para-クレゾール (p-クレゾール). These forms occur separately or as a mixture.
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訳文を作っていきます。下の文章は、一文目を訳し終わったところです。
(↓この文章をコピーして「クレゾール_jpn.txt」などの名前でテキストファイルを作ってから、マクロを試してみてください。)

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クレゾール分子は、フェノールの環上の水素の一つがメチル基に置換された構造をしています。

There are three forms (異性体) of クレゾール: ortho-クレゾール (o-クレゾール), meta-クレゾール (m-クレゾール), and para-クレゾール (p-クレゾール). These forms occur separately or as a mixture.
---------

一文目に引き続き、二文目を「クレゾールには、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、と三つの異なる形(異性体)があります。」と入力したいと思います。

まず、一文目の最後の「。」のあとに「最後に編集した位置」マークがあることを確かめます。


(他の所に「最後に編集した位置」マークある場合、この一文目の最後の「。」のあとにスペースを入力して、バックスペースで消せば、そこが「最後に編集した位置」になります。)←この括弧内の動作をマクロにしたものが、後述の「MoveEditPoint2CurCursor」マクロ。

そして、英文の「There are three forms (異性体) of クレゾール:」の「クレゾール」を範囲選択し、「Copy_LST」マクロを実行します。

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クレゾール分子は、フェノールの環上の水素の一つがメチル基に置換された構造をしています。クレゾール

There are three forms (異性体) of クレゾール: ortho-クレゾール (o-クレゾール), meta-クレゾール (m-クレゾール), and para-クレゾール (p-クレゾール). These forms occur separately or as a mixture.
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クレゾール」が一瞬でコピー&ペーストされました。カーソルは、いまコピー&ペーストされた「クレゾール」のあとにあるので、そのまま「には、」とキーボードから入力します。そして今度は「o-クレゾール」を範囲選択し、「Copy_LST」マクロを実行すると、また一瞬で「o-クレゾール」がコピー&ペーストされました。このように、キーボードからの入力と、すでに置換してある用語のコピー&ペーストを繰り返すと、二文目の入力が終わります。

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クレゾール分子は、フェノールの環上の水素の一つがメチル基に置換された構造をしています。クレゾールには、o-クレゾールm-クレゾールp-クレゾール、と三つの異なる形(異性体)があります。

There are three forms (異性体) of クレゾール: ortho-クレゾール (o-クレゾール), meta-クレゾール (m-クレゾール), and para-クレゾール (p-クレゾール). These forms occur separately or as a mixture.
---------

今回は、範囲選択をしてから「Copy_LST」マクロを実行しましたが、範囲選択しない場合は次のような動作をします。
  • カーソル位置が最終編集位置とは異なる場合
そのときカーソルがある前後の、スペースやテン、カンマ、改行、括弧、@などで挟まれた部分がコピー&ペーストされます。今回の例の場合、最初の「クレゾール」のときに範囲選択せずに「クレゾール」の「レゾー」あたりにカーソルをおいて「Copy_LST」マクロを実行すると、「クレゾール」だけがコピー&ペーストされますが、二箇所目の「o-クレゾール」のときに範囲選択せずに「レゾー」あたりにカーソルをおいて「Copy_LST」マクロを実行すると、「(o-クレゾール)」がコピー&ペーストされます。
 ※日英翻訳の場合、ST(または「AddTerm」マクロ)で置換した英単語の前後にはスペースが挿入されているはずなので、基本的に英単語のみがコピー&ペーストされます。

  • カーソル位置が最終編集位置のままの場合
現在編集中のテキストファイルのサブ拡張子が「_eng」の場合、「, 」(カンマ+半角スペース)を挿入し、それ以外のファイルの場合は、「の」を挿入します。


範囲選択してから「Copy_LST」マクロを実行する場合、以下の左側の語と記号は右側のように変換されてからペーストされます。
to → から
or → や
and → と
at → における
. → 。
, → 、
。 → . (ピリオド+半角スペース)
、 → , (カンマ+半角スペース)

(このように変換されて欲しくないときは、「Copy_LST.mac」の104行目から113行目を書き換えます。)

このように、このマクロを使うと、すでにある語句を簡単にコピー&ペーストすることができますので、翻訳のみならず、原稿やブログを書くときにも使えます。私はこのマクロをマウスの親指から二番目に近いボタンに割り当てて使っています(一番近いところには、「辞書引きをするマクロ(Dic_DDJamming.mac)」)。

******************
この「Copy_LST」マクロを使うときに一緒に使うと便利なのが、上でちょっと触れた「MoveEditPoint2CurCursor」マクロです。
改行の直前でマクロを実行すると、そこが「最後に編集した位置」になります。
(スペースを入力して、それをバックスペースで消しています。)
文の途中など、改行の直前ではないところでこのマクロを実行すると、改行をしてから、その改行の直前が「最後に編集した位置」になります。

この「MoveEditPoint2CurCursor」マクロにも入力しやすい位置のショートカットを割り当てておくと便利です。

2013年6月21日金曜日

秀丸マクロ:用語統一(一括置換&用語集生成)マクロ

SimplyTerms(ST)に同梱されているマクロの中で、次に紹介するのは用語統一用のマクロ、「AddTerm」です。

このマクロを使うと、秀丸標準の[置換]機能よりも簡単に「(一括)置換」ができ、それと同時に、置換した原語と訳語をセットにした用語集を(ほとんど自動的に)作っていくことができます。

基本的な使い方は、
(訳語を訳文に入力→)訳語をクリップボードにコピー→原語を範囲選択→マクロ実行→(用語集に原語と訳語のセットが自動的に登録される)→マクロ実行
ですが、これだけではわかりづらいと思うので、「SimplyTermsを使った翻訳(その1)~(その5)」で使った「1,2-Dichloroethane.docx」の翻訳(英日翻訳)で実際に試してみましょう。

下の点線と点線の間をコピーして、「1,2-Dichloroethane_jpn.txt」という名前のテキストファイルを秀丸で作ってください。(もとの原稿にサブ拡張子をつけて、テキスト抽出して、サブ拡張子を変更して、英日翻訳をするためのテキストファイルが準備できた状態です。)

サブ拡張子は常にターゲット言語にしておいてください。今回のマクロでは、このサブ拡張子も関係してきます。

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[[BD-1]]
1,2-Dichloroethane
[[BD-2]]
The chemical compound 1,2-dichloroethane (or DCA) commonly known by its old name of ethylene dichloride (EDC), is a chlorinated hydrocarbon, mainly used to produce vinyl chloride monomer (VCM, chloroethene), the major precursor for PVC production. It is a colourless liquid with a chloroform-like odour. 1,2-Dichloroethane is also used generally as an intermediate for other organic chemical compounds and as a solvent. It forms azeotropes with many other solvents, including water (b.p. 70.5 C) and other chlorocarbons.[1]
[[BD-3]]
Safety
[[BD-4]]
1,2-Dichloroethane is toxic (especially by inhalation due to its high vapour pressure), highly flammable,[4] and carcinogenic. Its high solubility and 50-year half-life in anoxic aquifers make it a perennial pollutant and health risk that is very expensive to treat conventionally, requiring a method of bioremediation.[5] While the chemical is banned from use by U.S. manufacturers,[6] a case was reported in 2009 of molded plastic consumer products (toys and holiday decorations) from China that released 1,2-dichloroethane into homes at levels high enough to produce cancer risk.[7] Substitutes are recommended and will vary according to application. Dioxolane and toluene are possible substitutes as solvents. Dichloroethane is unstable in the presence of aluminium metal and, when moist, with zinc and iron.
------

では、始めましょう。

※どのように翻訳作業を進めるか、例えば原文の上側に訳文を書いていく、下側に書いていく、原文訳文と交互に書いていくなど、やり方はそれぞれだと思うので、これは一つの例です。

ざっと内容に目を通し、ひとまず、最初の段落(小見出し)を訳しました。

------
[[BD-1]]
1,2-ジクロロエタン
[[BD-2]]
The chemical compound 1,2-dichloroethane (or DCA) commonly known by its old name of ethylene dichloride (EDC), is a chlorinated hydrocarbon, mainly used to produce vinyl chloride monomer (VCM, chloroethene), the major precursor for PVC production. It is a colourless liquid with a chloroform-like odour. 1,2-Dichloroethane is also used generally as an intermediate for other organic chemical compounds and as a solvent. It forms azeotropes with many other solvents, including water (b.p. 70.5 C) and other chlorocarbons.[1]
[[BD-3]]
Safety
[[BD-4]]
1,2-Dichloroethane is toxic (especially by inhalation due to its high vapour pressure), highly flammable,[4] and carcinogenic. Its high solubility and 50-year half-life in anoxic aquifers make it a perennial pollutant and health risk that is very expensive to treat conventionally, requiring a method of bioremediation.[5] While the chemical is banned from use by U.S. manufacturers,[6] a case was reported in 2009 of molded plastic consumer products (toys and holiday decorations) from China that released 1,2-dichloroethane into homes at levels high enough to produce cancer risk.[7] Substitutes are recommended and will vary according to application. Dioxolane and toluene are possible substitutes as solvents. Dichloroethane is unstable in the presence of aluminium metal and, when moist, with zinc and iron.
------

次の段落の最初の方にまた「dichloroethane」を見つけました。この後も何度も出てくるようです。これを一括置換しましょう。
まず「ジクロロエタン」(訳語)を範囲選択し、コピーします(これでクリップボードに「ジクロロエタン」(訳語)がコピーされました)。
次に、「dichloroethane」(原語)を範囲選択します。
そして(範囲選択したままの状態で)、「AddTerm」マクロを実行します。

すると、自動で新しい秀丸ファイルが開き、一行目に
dichloroethane    ジクロロエタン
と入力されました。そのままの状態で、もう一度「AddTerm」マクロを実行します。

翻訳をしていた「1,2-Dichloroethane_jpn.txt」のファイルに自動的に戻り、[置換の確認]という小さいウィンドウが現れ、dichloroethaneとDichloroethaneがハイライトされています。(大文字と小文字は区別されません。)

今回はそのまま全部置換しても大丈夫なので、[一気]をクリックします。すると、下のように、すべて置換されました。

------
[[BD-1]]
1,2-ジクロロエタン
[[BD-2]]
The chemical compound 1,2-ジクロロエタン (or DCA) commonly known by its old name of ethylene dichloride (EDC), is a chlorinated hydrocarbon, mainly used to produce vinyl chloride monomer (VCM, chloroethene), the major precursor for PVC production. It is a colourless liquid with a chloroform-like odour. 1,2-ジクロロエタン is also used generally as an intermediate for other organic chemical compounds and as a solvent. It forms azeotropes with many other solvents, including water (b.p. 70.5 C) and other chlorocarbons.[1]
[[BD-3]]
Safety
[[BD-4]]
1,2-ジクロロエタン is toxic (especially by inhalation due to its high vapour pressure), highly flammable,[4] and carcinogenic. Its high solubility and 50-year half-life in anoxic aquifers make it a perennial pollutant and health risk that is very expensive to treat conventionally, requiring a method of bioremediation.[5] While the chemical is banned from use by U.S. manufacturers,[6] a case was reported in 2009 of molded plastic consumer products (toys and holiday decorations) from China that released 1,2-ジクロロエタン into homes at levels high enough to produce cancer risk.[7] Substitutes are recommended and will vary according to application. Dioxolane and toluene are possible substitutes as solvents. ジクロロエタン is unstable in the presence of aluminium metal and, when moist, with zinc and iron.
------

これが、このマクロの基本的な動きです。

先ほど自動でできた秀丸ファイルを見てみると、ファイル名は「1,2-Dichloroethane_trm.txt」(「元のファイル名_trm.txt」)となっています。サブ拡張子が「_trm」で「英語(tab)日本語」という形式、つまりSTの用語集形式になっていますので、次回似たような案件を依頼されたときに用語集として使えます。

次の単語をまた「AddTerm」で置換すると、今できた「1,2-Dichloroethane_trm.txt」の用語集に追加されます。実際に試してみましょう。

「compound」を「化合物」と置換してみます。
------
[[BD-1]]
1,2-ジクロロエタン
[[BD-2]]
化合物

The chemical compound 1,2-ジクロロエタン (or DCA) commonly known by its old name of ethylene dichloride (EDC), is a chlorinated hydrocarbon, mainly used to produce vinyl chloride monomer (VCM, chloroethene), the major precursor for PVC production. It is a colourless liquid with a chloroform-like odour. 1,2-ジクロロエタン is also used generally as an intermediate for other organic chemical compounds and as a solvent. It forms azeotropes with many other solvents, including water (b.p. 70.5 C) and other chlorocarbons.[1]
[[BD-3]]
Safety
[[BD-4]]
1,2-ジクロロエタン is toxic (especially by inhalation due to its high vapour pressure), highly flammable,[4] and carcinogenic. Its high solubility and 50-year half-life in anoxic aquifers make it a perennial pollutant and health risk that is very expensive to treat conventionally, requiring a method of bioremediation.[5] While the chemical is banned from use by U.S. manufacturers,[6] a case was reported in 2009 of molded plastic consumer products (toys and holiday decorations) from China that released 1,2-ジクロロエタン into homes at levels high enough to produce cancer risk.[7] Substitutes are recommended and will vary according to application. Dioxolane and toluene are possible substitutes as solvents. ジクロロエタン is unstable in the presence of aluminium metal and, when moist, with zinc and iron.
------

まず「化合物」と入力し、これをコピーし、「compound」を範囲選択し、「AddTerm」を実行します。
先ほどの「1,2-Dichloroethane_trm.txt」の1行目に、「compound」と「化合物」のセットが追加され、先ほどあった「dichloroethane」と「ジクロロエタン」のセットは2行目に移動しました。
compound    化合物
dichloroethane    ジクロロエタン
もう一度「AddTerm」マクロを実行すると、また、[置換の確認]という小さいウィンドウが現れ、どのように置換するか聞いてきますので、自分の望む置換方法を選びます。
[一気]で置換した結果は、下のようになります。

------
[[BD-1]]
1,2-ジクロロエタン
[[BD-2]]
化合物

The chemical 化合物 1,2-ジクロロエタン (or DCA) commonly known by its old name of ethylene dichloride (EDC), is a chlorinated hydrocarbon, mainly used to produce vinyl chloride monomer (VCM, chloroethene), the major precursor for PVC production. It is a colourless liquid with a chloroform-like odour. 1,2-ジクロロエタン is also used generally as an intermediate for other organic chemical 化合物@@pl and as a solvent. It forms azeotropes with many other solvents, including water (b.p. 70.5 C) and other chlorocarbons.[1]
[[BD-3]]
Safety
[[BD-4]]
1,2-ジクロロエタン is toxic (especially by inhalation due to its high vapour pressure), highly flammable,[4] and carcinogenic. Its high solubility and 50-year half-life in anoxic aquifers make it a perennial pollutant and health risk that is very expensive to treat conventionally, requiring a method of bioremediation.[5] While the chemical is banned from use by U.S. manufacturers,[6] a case was reported in 2009 of molded plastic consumer products (toys and holiday decorations) from China that released 1,2-ジクロロエタン into homes at levels high enough to produce cancer risk.[7] Substitutes are recommended and will vary according to application. Dioxolane and toluene are possible substitutes as solvents. ジクロロエタン is unstable in the presence of aluminium metal and, when moist, with zinc and iron.
------

※STで用語集を適用したときと同じように、英語が複数形であった箇所には、訳語(日本語)のあとに「@@pl」が自動的につけられます。

これがこのマクロの基本的な動きです。頻繁に使うものなので、入力しやすいショートカットキーを割り当てるといいと思います(マウスを右手で使うなら、左手で簡単に入力できるところがおすすめです)。

[置換の確認]ウィンドウの各項目は、以下のような動きをします。(各項目は、マウスでクリックするだけではなく、括弧に入ったアルファベットを入力することでも選べます。このアルファベットの入力の方が断然早いと思います。)
置換(R)・・・いま選択されている(反転している)箇所のみを置換します。
置換+次(C)・・・いま選択されている(反転している)箇所を置換したあと、次の対象箇所に移動します。
一気(A)・・・対象となる箇所(ハイライトされている箇所)すべてを置換します。
上候補(P)・・・いま選択されている(反転している)箇所を置換せずに、前(上)の対象箇所に移動します。
下候補(N)・・・いま選択されている(反転している)箇所を置換せずに、次(下)の対象箇所に移動します。
キャンセル・・・何も置換せずに終わります。

このマクロを使うときに注意する点は、
  • サブ拡張子を必ずターゲット言語にしておく(英日翻訳の場合は「_jpn」)。このマクロは、自動的に生成される用語集が「英語(tab)日本語」の順番になるように、サブ拡張子を参照して判断しているので、サブ拡張子を間違うと、1列目(英語)と2列目(日本語)が逆になった用語集ができてしまいます。
  • 「AddTerm」マクロを一度実行し用語集ファイルに移動したときに、(英語の複数形など)必要に応じて用語を修正する。英語が複数形だった場合、マクロ実行直後はその複数形(と思われる)部分が範囲選択されている状態なので、削除したり、書き換えたり、等、簡単に修正ができます。
何度か使って慣れてきたら、STの[ヘルプ]→[同梱秀丸マクロのヘルプ]→[個別マクロの操作方法]→[用語統一]をぜひ読んで下さい。


***************************************
実は私はこのマクロをそのまま使うのではなく、一部書き換えて使っています。こういうふうにも使えるよ、ということで、参考に書いておきます。

「AddTerm」マクロの場合、最初に訳語をクリップボードにコピーするために、訳語を訳文中にあらかじめ入力しなければなりません。つまり、次のような流れになります。
(訳語を訳文に入力→)訳語をクリップボードにコピー→原語を範囲選択→マクロ実行→(用語集に原語と訳語のセットが自動的に登録される→)マクロ実行
これを、私の翻訳の進め方に合うように、
原語を範囲選択→マクロ実行→訳語をウィンドウに入力→OKをクリック→(用語集に原語と訳語のセットが自動的に登録される→)マクロ実行
という流れになるようにマクロを変更しました。変更した箇所は次の通りです。

AddTerm.mac(抽出単語を追加するマクロ Ver 3.00)の232行目から253行目
-------------------------------------------------------------------------
    //置換元単語を$$originalwordにコピー
    $$originalword = gettext(seltopx, seltopy, selendx, selendy);
    call ReplaceStr $$originalword, " ", " ";
    $$originalword = $$return;

    //フレーズが登録されているファイルをオープンし、最初に移動。
    call Another_File $PhrsFile;
    escape;
    gofiletop;

    //以下の形式で登録
    //   英語    日本語(リターン)
    if ($TransDir == "EtoJ"){
        insert $$originalword + "\t" +"\n";
        left;
        poppaste;
    } else {
        insert "\t" + $$originalword + "\n";
        gofiletop;
        poppaste ;
    }
    save;
-------------------------------------------------------------------------

-------------------------------------------------------------------------
    //置換元単語を$$originalwordにコピー
    $$originalword = gettext(seltopx, seltopy, selendx, selendy);
    call ReplaceStr $$originalword, " ", " ";
    $$originalword = $$return;
//変更!訳語を入力する
    $jpnword = input("訳語を入力してください");


    //フレーズが登録されているファイルをオープンし、最初に移動。
    call Another_File $PhrsFile;
    escape;
    gofiletop;

    //以下の形式で登録
    //   英語    日本語(リターン)
    if ($TransDir == "EtoJ"){
        insert $$originalword + "\t" +"\n";
        left;
//変更!    poppaste;
        insert $jpnword;


    } else {
        insert "\t" + $$originalword + "\n";
        gofiletop;
//変更!    poppaste ;
        insert $jpnword;

    }
    save;
-------------------------------------------------------------------------

2013年6月14日金曜日

秀丸マクロ:辞書引きマクロ

SimplyTerms(ST)に同梱されているマクロの中で、一番役立つのは「辞書引きマクロ」だと思います。秀丸エディタを使って翻訳をしているときに、カーソル位置の単語、あるいは選択範囲の用語について、JammingやDDWinで辞書を引くことができます。

使う場合には、自分の環境に合わせて数カ所書き換える(カスタマイズする)必要があります。バージョンアップ時に不用意に上書きしないよう、カスタマイズするときに別名で保存しておくことをおすすめします(最近はマクロ自体はバージョンアップされていないようですが、念のため)。

マクロの動作

単語(またはフレーズ)を選択している場合
  • その選択範囲をJammingやDDWinで調べます。
選択していない場合
  • 英語の文章では、カーソルがある位置の単語を調べます。カーソルが改行やピリオドの所にある場合、ファイルの前方にさかのぼっていって最初に出会った単語を調べます。
  • 日本語の文章では、カーソルがある位置の「漢字の連なり」を調べます。ひらがなやカタカタ、改行や句読点のところにカーソルがある場合は、直後が漢字ならその漢字、漢字で無い場合はファイルの前方にさかのぼっていって最初に出会った漢字(の連なり)を調べます。

また、このマクロは英単語の語尾(ed, ing, ies, es, er, est, ness など)を補正してくれます。ただし、機械的に判別しているので、正しく補正できないものもあるので注意してください(例えば、putting→putt, species→specy となってしまうなど)。

カスタマイズ方法

マクロを保存しているフォルダにある、「Dic_DDJamming.mac」(中身は普通のテキスト)を秀丸で開き、
//●●●●●カスタマイズ部分-ここから●●●●

//●●●●●カスタマイズ部分-ここまで●●●●
で挟んである部分を書き換えて、(別名で)保存します。書き換え方はそのカスタマイズ部分の上に書いてあります。

カスタマイズ箇所は以下の通りです。私はJammingだけしか使ってないので、DDWinについてはよくわかりませんm(_ _)m。

・110行目から(必須

使用する辞書ブラウザを指定します。このマクロでは、Jammingのみ、DDWinのみ、あるいは両方を使うことができます。

・118行目から

終了時のフォーカスを「辞書画面のまま」にするか、または「秀丸に戻す」かを選びます。

・135行目から(DDWinを使う場合のみ)

「通常のフレーズ検索」か「プラプラ検索」とするかを選びます。

・155行目から(DDWinを使う場合のみ。「実行ファイルのある場所」は必須

DDWinの実行ファイルのある場所やグループ指定、検索条件などを書き換えます(指定方法などは、DDWinのヘルプで確認してください)。

・171行目から(Jammingを使う場合のみ。「実行ファイルのある場所」は必須

青字の部分(Jammingの実行ファイルのある場所と辞書グループの指定、検索条件など)を書き換えます。

run "c:\\program files\\Jamming\\Jamming.exe -w\"" + $$word + "\" -m\"一網打尽\" -n\"第1グループ\" -#1 -f";

  • 「c:\\program files\\Jamming\\Jamming.exe」の部分→自分の環境で、Jammingの実行ファイルのある場所に書き換えます。(文字化けしているかもしれませんが)円マーク(\)を二つ重ねることを忘れずに。
  • 「一網打尽」→Jammingの検索方法を指定します。「一網打尽」か「前方一致」にするといいと思います。(私は普段は「前方一致」で検索しておいて、必要なときだけ、Jamming側で検索方法を「一網打尽」にして調べています。)
  • 「第1グループ」→Jammingを複数立ち上げ、いつも決まった「辞書セット」(Jammingの辞書ウィザードで設定できます)で辞書を引く場合、この部分を自分が使う「辞書セット」の名前にしておけば、その辞書セットで辞書を引いてくれます。辞書セットを案件毎に変えたりする場合は、この部分は書き換えずに、Jamming側で自分で辞書セットを指定すれば大丈夫です。

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Jammingは現在では単体での新規ライセンス販売は終了していますが、Logophileの正規ユーザーには無料オプションとしてライセンスが発行されるようです。

また、Logophileでこのマクロと同じような機能を使いたいという方は、「On the Backstage 翻訳者のための情報源」で秀丸からLogophile(のみ)を引くマクロが公開されています。
(「【PC】役に立つソフトウェア」→「2. 翻訳業務に役立つソフトウェア」→「◎Logophile」の「秀丸エディタとの連携マクロをこちらで公開しています」)
58, 59行目の、「Logophileの実行ファイルのある場所」を(必要に応じて)自分の環境に合わせて書き換えれば使えます。

2013年6月7日金曜日

秀丸マクロ:準備編

SimplyTerms(ST)には、便利な秀丸マクロが多数同梱されています。その中から特に便利なものを何回かに分けて紹介したいと思います・・・がその前に、今回は秀丸でマクロを使えるようにするための準備を説明したいと思います。

秀丸ですでにマクロを使ってる方は、今回は読み飛ばしてください。
秀丸を最近インストールしたばかりという方や、ちょっとだけ使って放置だったわー、マクロ使ったことないわー、という方は、まずはこの設定をしてください。

※今回の内容の大半は、STの[ヘルプ]→[同梱秀丸マクロのヘルプ]の「秀丸で使えるようにする」の項目に書いてあります。

Step 1 マクロファイル用のフォルダを指定する

まず、秀丸でマクロファイルを入れておくフォルダを指定します。ここで指定したフォルダが、秀丸のメニューで[マクロ]→[マクロ実行...]を選んだときに表示されます。

①マクロファイル用のフォルダを作る(または、マクロファイルが入ったフォルダを持ってくる)。

マクロファイル用のフォルダをどこに置くかですが、Buckeyeさんが書かれた秀丸マクロヘルプには

1. 秀丸をインストールしたフォルダ(ふつうはprogram files\hidemaru)の下に"macros"など、適当な名前のフォルダを作る。
2. まったく別の場所にマクロ用フォルダを作る。

と選択肢が書いてあり、Buckeyeさんは2だそうです(私は1の秀丸のフォルダに作ってます)。
②[その他]→[動作環境]→[環境]の[パス]欄の[マクロファイル用のフォルダ]の右にある[参照]をクリックする。

③①で作ったマクロファイル用のフォルダを指定する。
④[OK]をクリックする。
⑤①で作ったマクロファイル用のフォルダが空の場合、マクロファイルを入れる。

Step 2 マクロを登録する

マクロファイル用のフォルダを指定したので、秀丸のメニューの[マクロ]→[マクロ実行...]を選ぶと、ずらずらっとマクロが表示されます。表示されたものの中から使いたいマクロを選んで、[OK]をポチッとすると、マクロが実行されますが、頻繁に使うマクロはショートカットキーを割り当てたり、マウスの右クリックメニューから実行できるようにした方が便利です。そのためにはまず、マクロを登録しなければなりません。

①秀丸メニューで[マクロ]→[マクロ登録...]を選ぶ。
②対象の欄で「1~10」または「11~20」を選ぶ。
「1~10」を選んだ場合、秀丸メニューで[マクロ]を選んだときに、[マクロ実行...]の下側にずらずらっとマクロが並び、さらに、自動的に「Ctrl+数字」がショートカットキーとして自動で割り当てられます。頻繁に使うものは指が届きやすいキーに割り当てた方が便利だと思うので、まずは「11~20」に登録して、使いやすいショートカットキーを割り当てる方がおすすめです。「11~20」に登録した場合、「1~10」に登録したマクロのさらに下側に、[グループ名]と横向き三角が現れ、横向き三角をたどると、マクロを選んで実行できます。
③[対象]の欄で「11~20」を選んだ場合、[グループ名]を入力する。
④[タイトル]欄にマクロの名前を考えて書く(短くて分かりやすい名前がおすすめ)。
⑤[ファイル名]欄の右端の▼をクリックして、登録したいマクロを選ぶ。
⑥④と⑤を繰り返してマクロを登録したら、[OK]をクリックする。

無事マクロを登録できたので、メニューで[マクロ]→[(使いたいマクロ)]と選んでマクロが実行できるようになりました。

頻繁に使うマクロは、次のStep 3の設定をして、さらに簡単に使えるようにしましょう。

Step 3 短い手順で実行できるようにする

簡単に使う方法として、まずマクロにショートカットキーを割り当てて、それを「キーボードで入力する」「マウスの右クリックメニューに追加する」「マウス(多ボタンマウス)のボタンに割り当てて使う」、があります。

まずはすべての基本となる、マクロにショートカットキーを割り当てる方法を説明します。

①秀丸メニューで[その他]→[キー割り当て...]を選ぶ。
②左側の[キー]のところで、割り当てたいキーの組み合わせを選びます。
私の場合、右手はマウスとキーボードを行ったり来たりするので、よく使うショートカットは左手で操作できる範囲に設定し、「Altとアルファベット」または「Ctrlとアルファベット」の組み合わせを使っています。(ショートカットキーを押しやすくするために、KeySwapをいうフリーソフトを使って、スペースバーの両隣をAltキーに、CapslockキーをCtrlキーに変更しています。)
③右側の[コマンド]の下のプルダウンメニューから、[メニュー/マクロ]を選び、割り当てたいマクロを選びます。
④[OK]をクリックし、ウィンドウを閉じます。
⑤キーボードでいま割り当てた組み合わせのキーを入力すると、マクロが実行されます。

これで、マクロに割り当てたショートカットキーを「キーボードで入力」して、簡単に実行できるようになりました。

次に「マウスの右クリックメニューに追加する」方法です。
ここでは、秀丸で右クリックしたときに出るメニュー(コピーや切り抜き、貼り付けが出てくるやつ)にマクロを追加する方法を説明します。

①メニューから[その他]→[メニュー編集...]を選び、[ユーザーメニュー]タブをクリックする。
②[メニュー]の右隣のプルダウンメニューから、「メニュー8:右ボタン」または「選択中右ボタン」を選ぶ。
③[追加]ボタンをクリックし、出てきた[追加]ウィンドウの[コマンド]下のプルダウンメニューから、「メニュー/マクロ」を選ぶ。
④追加したいマクロを選択して[追加]ボタンをクリックする。
⑤そうすると[内容]の下の部分に追加されるので、[1つ上に移動][1つ下に移動]等を使って、使いやすい位置に移動させる。

最後に「マウス(多ボタンマウス)のボタンに割り当てて使う」方法。

シンプルなマウスには、右ボタン、左ボタン、スクロールホイールぐらいしかついていませんが、世の中にはたくさんボタンがついているマウス(多ボタンマウス)というものがあり、たいてい、ボタンに任意のキーの組み合わせ(つまり、マクロを登録したショートカットキーも可)を割り当てることができます。

いま私が使っているマウスは13個ボタンがある、LogicoolのG700です。(今は生産終了となり、後継機種のG700sが出ているようですが、機能ほとんど同じようです。)ちょっと高いので、初めて多ボタンマウスを試される方は、もう少し安くてボタンの少ないもので試されてもいいかも。私もG700の前はG400(8個ボタン。後継機種はG400s)を使っていて、その前はMicrosoftの4ボタンマウスでした。G700はゲーム用マウスらしく、私にはよく分からない機能(解像度が変えられるとか・・・)がついているし、ちょっと大きいので、もうちょっと小ぶりで、安い多ボタンマウスがあるといいのですが・・・。親指に一番近いところには、一番使用頻度の高い、ST同梱の「辞書引きをするマクロ(Dic_DDJamming.mac)」を割り当てています。
Logicool G700
 ともあれ、マウスでポチッとするだけでJammingが引けるようになると、辞書を引くのが億劫にならず、少ない労力でたくさん辞書が引け、良い翻訳につながると思います。

マウスのボタンにショートカットキーを割り当てる方法は、それぞれのマウスについてくる説明書や設定用のソフトをご覧ください。

次回からは、STに同梱されている便利なマクロを紹介していきたいと思います。